働く「場所」の選択制度について
1.働き方選択制度とは?
「働き方選択制度」は、キャップクラウド株式会社が2020年6月11日から導入した、「働き方の選択肢を増やす」ための新しい時代の働き方の仕組みです。具体的には6月11日から働く「場所」を選択できるようになり、翌月11日からは働く「時間」が選択できるようになりました。(詳しくはこちら)
今回はこのうち、働く「場所」の選択制度について、制度導入開始から3ヶ月が経過した今の状況を交えて、ご紹介しようと思います。
働く「場所」の選択制度の概要
今年に入って急速に普及している「テレワーク」や「在宅勤務」といった、場所にとらわれない働き方ですが、実は私たちキャップクラウド株式会社は、新型コロナウイルス感染症拡大以前からテレワークの制度を導入していました。
この制度を受ける形で今回新たにスタートした「働き方選択制度」、第一弾は働く「場所」の選択肢を幅広く設けました。具体的には
①本社 ②.work 富士吉田 ③自宅 ④anyplace ⑤サードプレイスオフィス
以上の5つの中から、メインで働く場所(メイン勤務地)を一つ、選択することができるというものです。
①は渋谷にある本社、②は当社が山梨県富士吉田市で運営するコワーキングスペース「anyplace.work 富士吉田」をメインに働くというもの。
③の在宅勤務に関しては、プライベートと仕事を厳密に区別する観点から、自宅が働く場所にふさわしいものであることを確認するための明確な基準を設けており、申請して承認されることにより、働く場所として登録することができます(詳しくはこちら)。
④は当社が開発した打刻ロケーションシステムである「anyplace」が設置されている全国48拠点(10月21日現在)のコワーキングスペースや任意の場所を選んで働くことができるシステム。
(詳しくはこちら)
⑤は、従業員が利用しやすい任意のコワーキングスペースなどを「サードプレイスオフィス」として登録してもらうというもの。子どもさんの送り迎えなどに便利な場所を勤務地として選んでもらうこと等を想定しています。
各制度には、それぞれに応じた金銭の支給があります。例えば「anyplace」を選んだ人は、一ヶ月の交通費+コワーキングスペース利用料が支給されるものや(上限あり)、在宅で勤務する人への「在宅勤務手当」などです。これにより、各働き方の間で生じる可能性のある不公平感を是正しています。
なお、上記のメイン勤務地の他に「スポット勤務地」として、その日の気分や都合に合わせて、別の働く場所を選べる仕組みもありますので、選んだ勤務地以外では働くことが出来ない、というものではありません。(スポット勤務地で働くためには、申請が必要な場合あり)
2.働き方選択制度を導入した理由
この新しい「働き方選択制度」。どうしてこんな仕組みを導入することになったかというと
「働き方、パーソナライズ」
というキャップクラウド株式会社の理念を、具体的な制度という形にして提供するためです。
従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせて柔軟に働き方を選んでもらえるようにすることで、社員一人ひとりがイキイキと、自分らしく働くことができる。このことは、従業員はもちろん、会社にとってもまた、メリットが大きいと考えています。
働く場所を一つのオフィスに限定しないことで、会社としては全国各地から幅広く人材を集めることが出来ますし、ライフスタイルの変化(結婚・出産)や家庭の事情(育児・介護など)による、優秀な人材の流出を防ぐことが出来ます。
また、従業員がその日の気分に応じて働く場所を選択できたり、自宅などの自分が慣れ親しんだ場所で働くことができるようにすることにより、生産性の向上はもちろん、ライフワークバランスの向上も期待することができます。
まさに会社・従業員に双方とって「Win・Win」の仕組み。これが当社の「働き方選択制度」なのです。
制度導入後の声 ー社内アンケート結果をもとにー
制度が導入されて約2ヶ月後、実際の満足度はどうか、制度の不備や使いづらいところはないか?今後、より良い制度へとブラッシュアップしていくために、社内でアンケートを実施しました。
現時点での総括として言えるのは、働く場所が複数選択できることが概ね好意的に受け取られているということ、仕事の効率や生産性は高くキープされているようだ、ということです。
本制度のもとで、「自宅」を選んで働いている従業員は53.8%で全体の半分以上になりますが、仕事が「非効率的になった」と回答した人はゼロでした。
「効率的に仕事ができた」と答えた人が約25%、「今までと変わらない」と答えた人が全体の約75%を占めています。これは以前から導入していたテレワーク(在宅勤務)を、働き方選択制度導入後も引き続き利用している従業員が多いためです。
記述式のアンケートには、自宅で働くことのメリットに関する記述が数多く寄せられています。例えば
・移動時間がなく、プライベートの時間をより有効に使える
・静かな環境で集中して作業できる
・QOLの向上から業務集中につながった (いずれも原文ママ)
といった意見が寄せられていました。
「今までと変わらない」という意見の人のほとんどが、制度導入前から継続してテレワークを利用しており、在宅勤務が長期に渡っている現在でも、生産性を下げることなく満足度を高く保った状態で、働くことができている実態がみえてきます。
また、「今とは違う場所で働いてみたいか?」という質問に対して4分の3に近い人が「はい」と答えていることは、働く場所が複数あって、それらが自由に選択できるという本制度の趣旨が幅広く受け入れられていると解釈することができるでしょう。
3.アンケートを通じて見えてきた、働き方選択制度のあるべき姿とは?
一方で、今回のアンケートでは「anyplace」「サードプレイスオフィス」について、新型コロナウイルスの影響で実質的には利用しにくい状況となっていることから、働く場所を自由に選ぶことができる、というこの制度の効果や満足度については「わからない」という回答が多くなっています。
そういう意味では、今後新型コロナウイルス感染拡大が収束に向かい、人々が自由に外出できるようになるにつれて、この「働き方選択制度」の真価も問われることになるのではないか、そんなふうに考えています。
また、上記の「anyplace」や「サードプレイスオフィス」など以外にも、もっと働く場所の選択肢が増えることを望んでいる人が多いという実態も浮かび上がってきました。
具体的には、自宅ではなく親族の家でも働けるようにして欲しいという意見で、お盆や子どもの長期休みなどのタイミングで帰省した際に、実家が働く場所として認められていれば、というものです。
コミュニケーションの問題
概ね満足度の高いシステムとなった感のある働き方選択制度ですが、一方で改善点や、今後の課題も見えてきました。
「働き方選択制度への感想」という自由記述式の設問で見られたのが「社員同士のコミュニケーションがなくなり、寂しい」という意見や「今まで隣りにいた人との情報共有が無くなった」などの、コミュニケーションに関するものでした。
コミュニケーションの問題は、当社に限らず、テレワーク導入を検討するすべての企業の懸案事項だと思います。事実、テレワークが普及していく過程で、リアルなコミュニケーションの機会が奪われ、強い疎外感や孤独感を感じる人も増えているといいます。
コミュニケーション・ロスの問題は、オンライン会議ツールやチャット・ツールなどの活用である程度、カバーすることが可能です。
一方で「ちょっとした雑談が多いチームは創造性や生産性が高い」という調査(1)もありますし、実際のオフィスでの交流や、カフェテリア等での雑談といった対面での交流が、組織内での情報共有や人間関係の構築に効果的であるという研究(2)もあることから、生産性の向上という観点からは、コミュニケーションの活性化やリアルな交流の機会の確保はどちらも大切なことであるということがうかがえます。
現在は新型コロナウイルスの影響もあって、リアルな対人接触は憚られていますが、WITHコロナ、AFTERコロナの世界を見据えた時に鍵となってくるのは「バーチャルとリアルのバランス」つまりテレワークの柔軟性や利便性と、リアルなコミュニケーションの機会を両立させるような仕組みなのかもしれない。今回のアンケート結果はそんな未来を示唆しているのかも知れません。
また、「新しく入社してくる人に、(働き方選択)制度の趣旨も含め、どのように伝えていくのか?」という問題提起も寄せられました。
これまでは「オフィス環境をインターネット上に再現する」という形でテレワークへの移行が行われてきましたが、WITHコロナの時代に新しく入社してくる人にとっては、そのバーチャルな環境がデフォルトになります。
そうなった時に、知識や技術などは伝達できたとしても、例えば休憩中の雑談などで醸成されてきた会社の文化やオフィス内の人間関係といった、インフォーマルな関係性が生産性に及ぼす影響をどう考えていくのか?
制度は出来上がって走り出しましたが、システムができたからといってそれで終わりになるわけではありません。これからも状況や時代の変化に応じて、柔軟にブラッシュアップしていくことが求められていると思います。
(1)渡邊純一郎、藤田真理奈、矢野和男、金坂秀雄、長谷川智之「コールセンタにおける職場の活発度が生産性に与える影響の定量評価」(「情報処理学会論文誌」Vol.54 No.4(2013年4月15日発行))
(2)藤野秀則、北村尊義、下田宏、石井裕剛、浦山大輝、大倉杏菜、西口幸太、棟友優香「業務における知識継承・情報共有を促す「休憩所での雑談」を 生み出す仕掛け」( 2017年度人工知能学会全国大会)
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