地方での人材獲得がこれからの企業に必要な理由

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少子高齢化が進む国内において、特に懸念されているのが公的保障制度や日本経済を支える労働力人口の減少です。事態が深刻化するにつれ、企業が人手不足の解消に向けて奔走する姿も当たり前の光景となりました。

テレワークが普及する昨今では、地方での人材獲得に舵を切るなど、これまでの採用活動を見直す動きが、企業の生存戦略として注目されています。しかしながら、従来の雇用条件に対する執着を手放すことは容易ではありません。

そこで今回は、これからの企業に地方での人材獲得が必要となる理由を解説するとともに、実際に地方の人材を採用している企業の取組事例を交え、新しい求人スタイルへと切り替えるための具体的な手法をご紹介していきたいと思います。

労働力人口の推移と採用活動の現状

まずは、労働力人口の推移と採用活動の現状を把握し、新しい求人スタイルへと切り替える必要性を確認しておきましょう。

現役世代の労働力人口の減少

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画像出典元:令和2年版 厚生労働白書(厚生労働省)

厚生労働省が発表した『令和2年版 厚生労働白書』によると、「労働力人口」と「就業者数」には緩やかな上昇が見られるものの、現役世代である「15-64歳人口」は世間のイメージ通りに右肩下がりの推移となっています。

定年後に再雇用されるシルバー人材の増加が背景としてありますが、2040年までの中長期的な推計では、高齢者数の伸びが鈍化し、人口全体が減少していくとのことです。

もしそうなれば、企業はこれまで以上に少ない人数で効率良く利益を出さなければなりませんが、優秀な人材を確保するための企業間競争もより熾烈になっていくことが想定されます。

潜在労働力人口が活躍できる場所の不足

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画像出典元:労働力調査(総務省統計局)

また、減少の一途をたどる労働力人口に加え、潜在労働力人口が活躍できる場所の不足も大きな問題です。総務省統計局が実施した『労働力調査』では、何らかの理由で求職活動を行っていない就業希望者が247万人にも上ることが判明しています。

「出産・育児のため」「介護・看護のため」といった回答は減少傾向にあるものの、合わせて92万人もの人材が、ライフステージの変化や家庭環境を理由に働くことができていない現状です。

希望する仕事内容と勤務場所のミスマッチ

特に、都市部と比べ雇用条件に大きな格差がある地方では、潜在労働力人口が求職活動を断念する機会も多くなりがちです。働き方改革が進む昨今においても、いまだに世の中では「勤務地=本社」が条件となっている求人が大半であるため、どれほど魅力的な仕事内容だとしても、物理的な要因でエントリーをあきらめてしまう求職者が後を絶ちません。

このような背景を見過ごすことは、優秀な人材を1人でも多く獲得したい企業にとって、致命的な機会損失であると言えるのではないでしょうか。

働く場所が制限されることにより生じる弊害

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少子高齢化問題に対して企業が描く生存戦略を阻む要因は、主として「働く場所」が制限されることにより生じる弊害です。柔軟性がない従来のような雇用条件を求職者に提示し続けることは、企業だけにとどまらず、社会全体の未来にとっても望ましくありません。

希望する仕事の勤務地が通勤圏外であれば、引っ越しせざるを得ない

当然のことながら、希望する仕事の勤務地が通勤圏外であれば、引っ越しをすることで物理的な条件をクリアできます。しかしながら、経済的な事情や家庭環境により転居がむずかしい求職者も少なくありません。

労働力人口の減少が深刻さを増す現代において、たった1つの条件をクリアできないというだけで、理想的な人材と巡り合うチャンスを逃すことは、企業にとって賢明な判断であると言えるのでしょうか。

働く場所が限定されてしまえば、その分だけ応募者の母数が少なくなる

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限定的な条件を求職者に提示するということは、相対的にフレキシブルな働き方を推進する他社の魅力が引き出されますので、自ら企業イメージを損ねてしまうことにほかなりません。

企業がこれからの生存戦略を考案する上では、働く場所に制限をかければ、その分だけ応募者の母数に反映されるということを意識しておく必要があります。

求人の東京一極集中が続けば、さらなる地方の過疎化が懸念される

先述した通り、これからは可能な限り優秀な人材を確保して少ない労働力人口で日本を支える必要があるのに、本社がある場所に仕事が紐づいてしまうと、働く人材の確保がより困難になります

また、本社や人口が集中する東京にばかり求人が出されている現状は、そのまま地方の過疎化を促進させてしまうことと同義です。いま働く場所について考えることは、さまざまな社会問題を解決するために必要なエッセンスなのかもしれません。

人手不足を解消するために企業ができること

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人手不足を解消するために企業が働く場所の見直しを図る際、明暗を分けるのが「テレワーク」という働き方です。働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症の影響により、世間での認知は急速に進みましたが、いまだに試行錯誤を続けている企業が少なくありません。

ここからは、働く場所を見直すために必要となる、テレワークの導入方法について触れていきます。

働く場所に対する執着は「ツール・文化・制度」で手放せる

企業が上手くテレワークを導入することができれば、働く場所に対する執着を手放すことが可能です。より理想的な環境を用意するにあたり、テレワークのために「ツール」を導入し、「制度」を整えて「文化」をつくるという流れを意識しておくことが重要になります。

・ツール

昨今では、円滑なテレワークを実施するためのツールが数多く登場するようになりました。ビジネスチャットやクラウドストレージ、ビデオ会議など、あらゆるニーズに対応するツールがありますが、1つの用途を切り取ってみても膨大な種類が存在します。

テレワークは、基本的にリモートで業務を行う働き方であるため、自社の業務や風土に適したツールを選択することがとても重要です。

・制度

テレワークの導入にあたり、適切な制度を設けることができれば、場所や時間に縛られないフレキシブルな働き方を実現できます。勤務地として認めるワークスペースの選定や業務フローの見直し、人事評価制度の再考など内容は多岐にわたりますが、この部分をおろそかにしてしまえば、テレワークの実施後にさまざまなトラブルが続出すること必須です。

もちろん、テレワーク制度を敷くためには膨大な時間がかかりますので、自社のリソース量に応じて、テレワークに特化した外部サービスの利用も検討してみてください。

・文化

テレワークを実施する際には、メンタル的な要素もやっかいな障壁となり得ます。とりわけ従来からの風習を重んじる日本において、テレワーク文化を醸成させるということは至極困難です。

まずは、制度を用意する企業サイドから積極的にチャレンジする姿勢を見せることが従業員の理解につながります。最新の技術や触れたことがないツールに対しても難色を示すことなく、意識的に「テレワークは当たり前」という考えを社内に浸透させることが先決です。

地方のワークスペースを勤務地として認めることで、採用の幅が拡がる

また、地方に居住する優秀な人材の獲得を目指すにあたり、そのエリアにあるワークスペースなどをテレワーク中の勤務地として認めることで、より柔軟性に富んだ働き方を実現できます。

テレワークと言えば在宅勤務のイメージですが、プライベートの場である自宅で就業することになりますので、課題も多く、すべての企業にとって最善の選択であるとは言えません。

そこで、地方にあるコワーキングスペースやカフェのような、会社でも自宅でもない「サードプレイスオフィス」を勤務地として認めることで、スマートに業務のオンライン化を進められるようになります。

「サードプレイスオフィス」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

一人にひとつの働き方を提供したい ―サードプレイスオフィスという選択肢―
https://shikumi-ken.jp/2020/05/thirdplace.html

求人票の勤務場所欄に地方の名称を加える

地方にあるサードプレイスオフィスをテレワーク中の勤務地として採用すれば、東京に本社を置く企業が出す求人票の勤務場所欄に地方の名称を追加できますので、他社との差別化要素になります。

特に、IT企業の求人を東京で出すと埋没しがちですが、地方では少数であることが多いため、その分だけ求職者の目に留まりやすいです。

企業の取組事例(キャップクラウド株式会社)

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最後に、多様な働き方を実践し、地方の人材を採用しているIT企業「キャップクラウド株式会社(以下キャップクラウド)」の取組事例をご紹介します。

キャップクラウドの4つの働き方(働き方選択制度)

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働き方の選択肢を増やすサービスを提供するキャップクラウドでは、社内制度として、従業員一人ひとりが働く場所を選択できる「働き方選択制度」を実施しています。

こちらの制度では、渋谷にある本社や地方で運営しているコワーキングスペースなど、4つの選択肢の中から、従業員それぞれが好みの勤務地を決められるとのこと。

実際に、制度を活用し、勤務地として選択できるワークスペースがある地方から採用された従業員もいらっしゃるそうです。

キャップクラウドが「働き方選択制度」を実施できている理由

働き方選択制度の維持を含め、地方の求職者に有効的なアプローチをかけるために必要な要素として、キャップクラウドは以下の3点をポイントとして挙げています。

・都内に本社を構えるだけでなく、地方にも拠点を用意している

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大前提ではありますが、地方の求職者をより多く採用するためには、本社とは別の拠点を地方に用意する必要があります。キャップクラウドでは、山梨県富士吉田市で運営する「anyplace.work 富士吉田」をはじめ、全国各地にあるサードプレイスオフィスを勤務地として選択できるようにしています。

・勤務地により雇用条件が変わることはなく、給与水準も東京に合わせている

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また、勤務地により雇用条件が変わることもないそうです。求職者が応募先を選ぶ際の重要な基準である給与水準も東京に合わせており、地方で就業する最大のネックを取り除いています。

・従業員の勤務実態を常に把握できるシステムを導入している

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テレワークにおける課題の1つに、遠隔で働くことによる勤務実態のブラックボックス化があります。キャップクラウドでは、自社が提供する打刻ロケーションシステム「anyplace」を用いて、従業員の勤務状況をリアルタイムで確認できる体制を整えているようです。

人手不足の解消は先手必勝!働く場所の選択肢を増やすことは未来への希望

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今後、人手不足による倒産が増える時代の到来は明らかであるため、企業には一刻も早い対策が求められます。生存戦略として働く場所を見直すことは、人材の確保だけでなく、さまざまなメリットを享受することが可能です。ぜひ本記事の内容を参考に、働き方改革を進めていただけたら幸いです。

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