(1)新卒採用の仕組みを改革せよ! ~現在の就活は本来勝負する必要のない椅子取りゲームである~

今回のテーマ:「現在の新卒採用の仕組み

突然ですが、大学卒の新社会人が3年後、最初の会社で働き続けている人がどれくらいいるか、知っていますか?

答えは、約7割です。

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出典:厚生労働省 学歴別卒業後3年以内離職率の推移

つまり、単純に考えると10人の新社会人の内、3人は3年以内でやめてしまうということになります。

原因は何でしょうか?
それは、主に企業と学生さんとの間にできてしまったミスマッチです。

今回はそのミスマッチについて新卒採用の視点から「新卒採用の仕組みは今どんな状況に立たされているのか」を取り上げます。

今回このテーマを取り扱うにあたって、取材をしてきました。
快く引き受けてくださったのは「オファーが届く逆求人型就活サイト OfferBox(オファーボックス)」を運営されている株式会社i-plug 代表取締役社長 中野智哉様です。

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▲代表取締役社長 中野智哉様

株式会社i-plug 代表取締役 中野智哉(なかの ともや)
1978年12月9日兵庫県生まれ。
2001年中京大学経営学部経営学科卒業。2012年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。
株式会社インテリジェンスで10年間求人広告市場で法人営業を経験。
また新卒採用面接や新人営業研修など人材採用・教育に関わる業務を経て、2012年4月18日に株式会社i-plugを設立。
出典:株式会社i-plug 公式サイト http://i-plug.co.jp/company/

「新卒採用の仕組みを改革せよ! ~現在の就活は本来勝負する必要のない椅子取りゲームである~」

松永:なぜ新卒の就職活動を支援するサービスをつくろうと思ったのですか?

中野:そうですね、なぜここに取り組んだかというと、3年で3割離職しているという状況に対して何かやれないかと考えたからです。

松永:3年で3割辞めるという状況がよくないものであると考えられているわけですね。

中野:3年で辞めてしまうと、多くの方はキャリアダウンになってしまうんですね。3年未満のキャリア経験って基本的にはその後に3年未満で学んだ知識を売る先がないですから。働いている期間だけでその業界を知り尽くすことは難しいし、担当した職種を知り尽くすことも難しいので。

離職した後は基本的に給料は前職と同じくらいで、会社規模が下がるっていうのが大半です。でも、みんなキャリアアップするって思っているんですよね。でもやっぱり、キャリアアップするっていうのは、まず何か取り組んでそこで知識や経験を磨きながら一人前になった次にあると思うんです。

そんな風に考えているんですけど、学生さんと話してみると「1,2年で今の会社で修行した後に次に行くんです」って人もいて。1,2年で修行っていうのはよっぽどやりつくさないと難しいですから。でもそれが全然伝わっていないんです。それは相当まずいですよ。あんまり覚悟しないで入ってしまうと、ちょっとした環境の変化でガラガラガラって崩れて、段々愚痴ばっかりになって、嫌になってやめてしまって...

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やめてしまうと癖になるんですよ。それが2社、3社と続いてしまうと、個人としても損失だし、会社の組織の視点から見てもよくないですね。

だからこそ、最初の「1社目」でしっかり自分のキャリアを作るための場所を見つけるのは大切だと思うんです。今の3年で3割辞めてしまっている現状は、その1社目の重要度が本当は高くあるべきなのに低くなってしまっている象徴ですね。

松永:しっかり学んで自分のものにするためには、やはり時間は必要ですね。ところで、学生さんは一体何が原因で辞めることを選択しているのでしょうか?

中野:そうですね。給料が安いとか、仕事が合っていないとかは、もちろんなんですけど。結局は「人間関係」ですね。基本的に活躍している人って人間関係がいい気がします。その人間関係を結び付けているものに仕事があるわけですが、その仕事での活躍度合が低くなってくると人間関係も悪くなってきます。

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実はその因果関係のある内容が、辞める理由の上位にきているだけで、おそらく理由は「人間関係」ってところに集約されると思います。だからこそ、その「活躍していない」というのが圧倒的なウェイトを持っていますね。

活躍していない人が3年未満でやめると、結果的にキャリアダウンになってしまう、3年で3割離職する社会を変えたい!と思って、OfferBoxのサービスを始めました。

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松永:実際サービスを始めようとしたときに新卒採用の市場は中野さんの目にはどう映りましたか?

中野:一番不思議に思ったのがあって。それは1人採用するために200人の母集団を集めるっていうことですね。この発想がですね、転職市場やアルバイト市場からすると考えられません。例えばアルバイトだったら1人採用するのに10人集まってくれたら十分ですし、中途採用の場合は40人集まれば1人取れていましたから。

そんな中、新卒だけが1つの枠に対してたくさんのエントリーを集めることが当たり前になっています。おかしな状況だなと思うんですよね。もし1人採用するために200人の募集が必要になってしまうのであれば、採用されなかった199人の学生さんにとってかなりしんどい状況なのは間違いないですね。

就活の時期になると学生さんはたくさんエントリーして、たくさん受けてを繰り返さなくてはいけない。そうすることが繰り返されて、就活がしんどいものになってしまっています。だからこそ、その仕組みを変えたいんです。

松永:結局今は何が問題になってその仕組みになっているのでしょうか?

中野:そもそもバランスがちょっと、多分壊れているんじゃないかなって思うんですよね。学生さんが悪いとか、企業が悪いとか、大学が悪いとか、そういうことではないです。

結局いつからこんなことになったかというと、たぶんナビができてからですね。学生さんはナビの情報を見て、たくさんの企業さんとネット上でコミュニケーションを取った上で最終的に面接などリアルな場で会うことになります。そのときに思うのは、ネット上でのコミュニケーション量とリアルでのコミュニケーション量に大きく差があって、リアルでのコミュニケーションがガンって下がるんですよね。

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松永:それはなぜなのでしょうか?

中野:時間的な問題ですね。リアルで交流しようと思うと双方にはそれなりの時間が必要になります。だったら、どうせ交流しないのであれば、ネット上でのコミュニケーション量が適切な量にすることによって、双方にとっての負担も軽減できるのにって思いますね。就職活動はナビを使っても、最後は会わなければ完結しないものですから。だから、そこを直したいと思っています。

松永:学生と企業とのコミュニケーション方法や量を正しいバランスに戻して、学生が入社後活躍できるための場所を見つけるためにOfferBoxが存在するわけですね。そしてそれは「学生と企業とのマッチングを入社前に高める」目的があるということですね。

中野:そうですね。簡単に言うと、今の就活は椅子取りゲームなんです。想像できないくらい巨大な椅子取りゲームです。で、そのプレイヤーとなる学生さんが42万人いるとするならば、椅子(就職先)は75万席あるような状況です。普通に椅子に座るのであれば、まっすぐ歩いて向かえばいいんですけど、現状は行く途中に1人あたり100近い数の椅子を狙っていて。学生さんにとっては椅子取りしている間は混んでるけど、終わってみるとたくさんの椅子が余っている、みたいな。だからこそ、色々なテクノロジーを使って最適な道を見やすくする仕組み作りに取り組んでいます。

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選考の仕組みを改革する。そうすることで、もっと学生と企業とのコミュニケーションの量を深くして、入社後の活躍を双方に期待した状態で新社会人生活をスタートできる。そんな仕組みをつくっていきたいと思います。

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現在の新卒採用に関する問題の根本を解決するためにOfferBoxは生まれました。

売り手市場だからこそ、学生がとりあえず受かった会社に就職してしまうことや、企業が内定辞退の人数を見越して多く採用する問題を多く見かけます。

だからこそ、「本当に就職後活躍できる場所を探したい」という学生と「人数で採用するのではなく、一人ひとりと向き合って一緒に働きたい人を採用したい」と考える企業にとって、オファーする仕組みは今後ますます重要になるかもしれません。

今回は「現在の新卒採用の仕組み」をテーマに取り上げました。
次回は「新卒採用の仕組みを改革するOfferBoxについて」詳しく書いていきます。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!

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