(2)新卒採用の仕組みを改革せよ! ~現在の就活は本来勝負する必要のない椅子取りゲームである~

今回のテーマ:「新卒採用の仕組みを改革するOfferBoxについて」

まずは、前回取り上げた「現在の新卒採用の仕組み」のおさらいから

・大学卒業後、3年以内の離職率は約3割である
・3年以内にやめてしまうと多くの方はキャリアダウンになる
・離職の原因は「企業と学生さんの間にできたミスマッチ」である
・ミスマッチを防ぐためには入社前に、企業と学生の間で深いコミュニケーションを取ることが大事である
・現状は選考時に複数人と一斉にコミュニケーションを取るため、一人あたりに避ける時間が少なくなっている
・だからこそ、1対1のコミュニケーションをもっととれる選考の仕組みが必要である

前回は「現在の新卒採用の仕組み」を中心に取り上げたので、今回は「新卒採用の仕組みを改革するOfferBoxについて」詳しく書いていきます。

取材に応じてくださったのは、前回に引き続き「オファーが届く逆求人型就活サイト OfferBox(オファーボックス)」を運営されている株式会社i-plug 代表取締役社長 中野智哉様です。

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▲代表取締役社長 中野智哉様

株式会社i-plug 代表取締役社長 中野智哉(なかの ともや)
1978年12月9日兵庫県生まれ。
2001年中京大学経営学部経営学科卒業。2012年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。
株式会社インテリジェンスで10年間求人広告市場で法人営業を経験。
また新卒採用面接や新人営業研修など人材採用・教育に関わる業務を経て、2012年4月18日に株式会社i-plugを設立。
出典:株式会社i-plug 公式サイト http://i-plug.co.jp/company/ 

新卒採用の仕組みを改革せよ! ~現在の就活は本来勝負する必要のない椅子取りゲームである~

松永:新卒採用の仕組みを改革するツールとして生まれた「OfferBox(オファーボックス)」について、どんなサービスなのか教えてください。

中野:OfferBoxは逆求人の方法を取り入れた、新しいカタチの就活サービスです。今対象となっているのは2018年に卒業予定の学生さんと、2019年に卒業予定の学生さんですね。企業は学生さんがつくったプロフィールを見て、「会いたい」と思った学生さんに、企業側から直接コンタクトが取れるようになっています。

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松永:学生さんのプロフィールにはどのようなことが書かれているのですか?

中野:自己PRには履歴書に書くような内容だけではなく、動画、写真、研究スライドなど自由に組み合わせて、最大2000文字のテキストと共に自分の「人となり」を企業にアピールできるようになっています。

松永:新卒の人をオファーする仕組みに驚いたのですが、なぜ企業から学生にオファーする仕組みにしようと思ったのですか?

中野:国内の転職市場を見てみたときに、企業と求職者が接点を持つ方法が4つに分類できることに気づいたんですよね。それは、「求職者からエントリー」「イベント参加」「紹介」「企業からスカウト」です。

サービスを始めようと思った当時、新卒の市場に関しては「企業からスカウト」だけがなかったんです。ナビサイトでダイレクトメールを学生さんに送る仕組みはありました。しかし、一斉にビラを配るように送っているためか、開封率が低かったんですよね。当時は開封率7%、学生の反応率1.6%ほどでした。だからこそ、「企業からスカウト」する市場はビジネス的にみればチャンスだと思いましたし、新卒採用市場にイノベーションを起こせるのではないかと考えました。

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松永:どのような点に拘ってつくったのか教えてください。

中野:拘ったのは、2点です。

①企業からオファーを送る
②オファー送信数・受信枠を制限する

オファー送信数・受信枠を制限するのは、ネット上でのコミュニケーション量とリアルな場でのコミュニケーション量のバランスを整えるためです。大量のオファーを多くの学生さんに送るのではなく、自己PRのプロフィールを見て、「会いたい」と思った学生さんにメッセージを送ることを仕組みにしたかったからです。

実はその他の機能に関しては、ほとんど実際に使用している企業と学生の声からできています。企業100社と学生200人にインタビューしたりしましたね。

松永:オファーする際に見る学生さんの自己PRプロフィールですが、とっても充実した内容になっていますよね。

中野:そうですね。学生さんのプロフィール量が多いことも特徴です。これはビジネスモデル的には完全NGなんですよ。どっちらかというと、学生さんの量が多い方がビジネスが成り立つじゃないですか。だからこそ、オファーするサービスが他で色々できてきたときに「1分で登録できる!」とか、「FacebookのログインだけでOK!」とか、簡単に登録できることが売りになるサービスがたくさんでてきたんです。でも、OfferBoxは真逆です。登録にがっつり1時間半くらいかかるんです。

こんな、ありえないサービスになったのも企業と学生の声があったからでした。言ってみれば学生さんは自分の全部を伝えてオファーをもらいたいわけです。大学のときだけではなくて、高校生の時とか、色々な思い出がありますから。それらをすべて履歴書で書くのは難しいですよね。だから、そういうところを変えていきたい。

企業さんも、大学のところだけをきいても自分の会社に合った人材なのか分からないことが多いです。学生さんの情報がサークル・ボランティア・部活・留学・勉強みたいにある程度同じに見えてしまうので。情報以外にも、例えば面接していて、女性が2人以上並んでしまうと、もうほとんど一緒に見えてしまうんですよね。一番困るのが差が分からないところです。だからこそ、あともう一個、性格の根底を作り上げたエピソードが欲しくなってきます。幼少期から小学・中学の前半くらいに性格のもとができあがると思うので。そのもとになる話を聞きたいって要望があって。じゃあもうそれを書けるようにしよう!と思って、学生さんのプロフィール量が充実しています。

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松永:適正検査にも力を入れている印象があります。

中野:あれはもう、導入までに3年かかったんですよね。株式会社イー・ファルコン様と連携してやっています。イー・ファルコン様とも「ミスマッチ」についてずっと話していて。学歴や偏差値だけで見ても、ミスマッチの根底って「活躍するか」「活躍しないか」なので、相関しないんですよね。なので、本当に活躍できる人材を探すためにも適正検査を導入しています。

こちらの適性検査は項目の数も多く、より細かい視点から見れるようになっていますし、何より第一人者が監修しているクオリティがあります。

松永:私も一度受けてみて、精度の高さに驚きました。社内で6名ほど社員が実際に受けてみたのですが、普段の働きぶりを知っているからこそ、よく分かることがたくさんあって。これが入社前に分かるとなると、本当に凄いですよね。ちなみに、企業と学生さんのそれぞれのオファーに関する送信・受信の制限はどのくらいなのですか?

中野:企業の送信枠が100枠、学生さんの受信枠が15枠です。企業が送信したオファーは開封率95%で、オファー承認率が平均40%になっていますね。上限を設けるのもこの業界じゃタブーなんですけど、それでもやっぱり双方がきちんと理解しようと思って向き合っていないと、数だけ稼ぐ就活になってしまいますから。そのためにも数の制限は必要であると考えています。

松永:i-plug様の新卒採用でもOfferBoxは使われているのですか?

中野:はい、もちろん使っています。2017年3月に卒業する学生さんをターゲットにしたときは、5名にオファーを送って、内2名が最終選考まで残りましたね。最終的にはそこから1名採用することができました。実際に自社のサービスを使って採用をやっていると「ここまで持ってくる世界観はつくれる」と改めて実感します。

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今はとりあえずたくさん会うことが主流になっていますが、これからは会う必要のある人にだけ会うことに変わっていくと思います。1社対1人のコミュニケーションが深くなれば、入社前にミスマッチは防げてきますので、大きな変化になりますよね。たくさん会えば安心するかもしれませんが、双方が疲弊しますから、正しいバランスに戻したいと考えています。そのためのツールとしてOfferBoxは生まれました。

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次回は「採用担当者に対する人事評価」と「新卒採用担当者へ向けたメッセージ」について詳しく書いていきます。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!

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