当社の在宅勤務の基準紹介
1)在宅勤務とはなにか
新型コロナウイルスの影響で一気に注目を集めることになった「在宅勤務」。
なんとなく「自宅で働く」ことを意味しているというのはわかりますが、改めて考えてみるとなかなか定義するのが難しい言葉です。
同じく最近注目を集めるようになった働き方に「テレワーク(リモートワークと同じ意味)」がありますが、具体的にこの「テレワーク」と「在宅勤務」を分ける基準はなんなのでしょう。
「 在宅勤務」はテレワークのひとつですが、会社に雇用されていることが前提条件になります。所属している組織が、従業員に労働を行う場所として自宅を認めていることが必要になるわけです。
テレワークは「特定のオフィスを持たない」という働き方の総称です。会社が定めたオフィスに出社するのではなく、場所にとらわれずに自分が働きやすい場所で働くこと。従って、自宅ではなく、コワーキングスペースやシェアオフィスのような場所で働くことも、「テレワーク」と呼ぶことができます。
では、在宅勤務ができることには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょう。
まず第一に「通勤時間がゼロ」というのがあげられます。毎朝満員電車に揺られ、会社にたどり着く頃にはヘトヘト、という経験がある方も多いと思います。在宅勤務が可能なら、通勤のストレスからは一気に開放されますし、通勤にあてていた時間がそのまま自由な時間になります。
浮いた時間を家事や趣味にあててもいいですし、自己研鑽の時間にして、今の仕事に関係のあるスキルを身につけることができれば、会社にとってもメリットが大きいですね。
小さなお子さんのいる家庭で在宅勤務が認められていれば、子供を預けて仕事に出る必要がないので、保育園が見つからないことなどが理由で離職や時短勤務をする必要もなく、安心して仕事と育児を両立させることができます。育児にかかるコストも大幅に削減できそうです。
このことは、企業側にも「優秀な人材の流出を防ぐことができる」というメリットがあります。
プライベートな空間が職場なら、空調の温度も自分好みに設定できますし、お手洗いに席を立ったり、ちょっと飲み物を取りに行ったりすることに、気を使う必要もありません。
満員電車に乗る必要もないので、いわゆる三密を防ぐこともでき、新型コロナウイルス感染対策も万全です。まさにこの感染症が原因で、テレワークや在宅勤務がにわかに注目を集めることになったのは、記憶に新しいところです。
2)家の中に仕事場をつくることの難しさについて
と、いい事ずくめのように思える在宅勤務ですが、これだけのメリットが有るにも関わらず、我が国でその導入が進んでこなかったことには、やはりそれなりの理由があったのではないかと考えています。
まず、100%プライベートな空間に仕事を持ち込むというのは、想像以上に難しいものです。
自宅にいれば、お気に入りの本やゲームなどの娯楽が目に付く場所にあるので、人によっては作業に集中することが難しくなります。
また、業務を適切に遂行できるスピードのインターネット環境がなければ、後述するオンライン会議ツールなどを使ったコミュニケーションに支障をきたします。コミュニケーション不足は作業の効率を下げ、ひいては生産性を低下させる原因となります。プライベートではなく、業務上円滑なコミュニケーションを可能にする程度のインターネット環境は必須条件と言えます。
インターネットに限らず、実際に業務で使用する机や椅子なども、あまりに簡便なものだと、長時間の業務には支障をきたしますし、メインで使用する通信機器についても、スマートフォンとタブレット型端末だけ、ということになると効率的に作業をすすめるのは難しくなるでしょう。
プライベートと仕事の空間を物理的に分け、業務に支障が出ないようにする工夫も、在宅勤務においては必要です。新型コロナウイルスの影響からZoomによるテレワークが盛んになり始めた当初、「子供が画面に写り込んで業務に支障をきたす」「ペットがキーボードの上に座って作業ができない」などの問題がメディアなどを通じて取り上げられていました。
さらに、これは前述の「コミュニケーション不足」の問題とも関係してきますが、オフラインで対面している場合と違い、上司は部下の体調や微妙な変化に気づくことが難しくなります。部下の方も「自宅だから」とついつい無理をしてしまい、結果体調を大きく崩して業務に支障をきたす、という可能性も考えられます。
3)当社が定めている、自宅で働くための条件とは
では、私たちはこれらの問題をどのように克服し、在宅勤務の働き方を社内に導入してきたのでしょうか?
現在私たちが取り組んでいる「働き方選択制度」の導入までは、在宅勤務は従業員からの申請に基づき、会社の承認によって認められれば原則誰でも可能としていました。
しかしながら、その方法だと、在宅勤務を導入していく上で、様々な支障があることが徐々にわかってきました。例えば、上述のような「プライベートと仕事を切り分けることの難しさ」や「コミュニケーション不足」、そして働く上で大切な「体調管理」などのコンディションの維持です。
これらの「自宅で働くことの難しさ」を踏まえ、働き方選択制度では、在宅勤務の申請に関していくつかの基準を設け、これを満たしていると会社が判断した場合のみ、在宅勤務を認めるという方法を導入しました(2020年6月11日〜実施予定)
私たちが導入した「在宅勤務の基準」は、以下のようなものです。
1.anyplaceを設置していること
anyplaceはBluetoothを利用して、場所と時間を記録することができる端末のことです。
これが自宅に設置されていることにより、従業員はanyplace設置地点である自宅で打刻し、業務開始時刻と現在地を会社に知らせることができます。
在宅勤務を始めるにあたっては、まずこのanyplaceを自宅に設置することが必要です。
2.申請、承認されていること
anyplaceを設置しただけでは、在宅勤務をスタートすることはできません。
会社は、テレワークに必要な備品は十分か、通信環境やプライベートとの境界線は曖昧ではないか、などを申請に基づいてチェックします。申請には「Garoon(ガルーン)」というグループウェアのワークフロー機能を使ってペーパーレスで行います。申請はネット上で可能なため、上司の押印も必要なく、申請から決済までスムーズに遂行する事ができます。
具体的には以下に挙げる項目を在宅勤務申請時に届け出ることによって、会社は申請を行った社員が在宅勤務可能かどうかを判断するのです。
申請に必要な項目は以下となります。
1.机の写真
業務に使用するものを撮影して申請します。
2.椅子の写真
業務に使用するものを撮影して申請します。
3.インターネット環境
どのようなインターネット環境を用意しているかを申告します。
4.仕事場の背景
Webカメラに映る背景を実際にZoomで映して、スクリーンショットを添付して申請します。テレワーク中、カメラONの状態で背景に映り込む自宅の様子が業務を行う上で適切なものであるかどうかを事前に確認するためです。
5.マルチディスプレイ環境の写真
マルチディスプレイ環境が整っている状態の写真を添付して、申請時に提出します。これは、マルチディスプレイ環境を構築することで、作業の効率が上がってストレス軽減にも繋がるためです。
また、当社では就業時間中、部署単位でWeb会議を立ち上げて、業務中はカメラをオンにして常に繋げておき、パソコン上にバーチャルなオフィス空間をつくっています。普段は音声を切っておいて、必要なときはオンにして声をかける。そのためにも、ディスプレイが複数あることが必要になるのです。
6.カメラの写真
カメラの写真を添付して申請します(PC内蔵のカメラでも可)
7.マイクの写真
マイクの写真を添付して申請(PC内蔵のマイクでも可)
8.受電対応の環境
受電環境が整えられない場合は申請を受け付けることはできません。当社では「BIZTEL」というクラウドPBXのシステムを導入しており、タブレットやパソコンから受電できるようにすることで、インターネット環境下であれば自宅でも内線対応ができるようにしています。
9.自宅の環境ー以下の三点について申請時に確認しています。
①仕事空間とプライベート空間を分けることが可能であるかどうか
②家族が仕事中に仕事空間に入る可能性がないか(檻に入っていないペットも含む)
③業務に影響がでそうな要因がないか
ここまでの厳格なルールを定めて運用する理由は「プラベートな空間」に「仕事の空間」をつくるのは簡単ではないと考えているためです。具体的には、働く場所が自宅になることで、私たちが仕事をする上で大切にしている「生産性」が下がってしまう可能性を出来る限り少なくするためのルールづくり。これが上記のような厳格なルールを設けている理由です。
これらをクリアし、会社の承認を得ることで、在宅勤務が可能となります。
4)サードプレイスオフィスという選択肢
自宅で働くことのメリットとデメリットを考慮した上で設けているこれらのしくみですが、ひとによってはハードルが高い、と思われる方もいるかも知れません。
そこで、私たちは「サードプレイスオフィス」という選択肢を用意しています。
これは「自宅」(第一の場所)でも「オフィス」(第二の場所)でもない「第三の場所」、すなわち「サードプレイス」で働く、という考え方です。
サードプレイスオフィスは、前述の「anyplace」が設置されているコワーキングスペースなどから、従業員がその利便性に基づいて選択することができます。
これにより、「自宅から近く通勤時間を短縮できる」「子供の送り迎えに便利な場所で働くことができる」などのメリットや「自宅に働く環境を構築するのが難しい」といったケースでも、テレワークを実施することができます。
(詳細は:『一人にひとつの働き方を提供したい ーサードプレイスオフィスという選択肢ー』を参照)
5)まとめ
今回は、「当社の在宅勤務の基準」についてご紹介しました。
実際に制度を導入するにあたり懸念されるのが「労働時間の管理」と「仕事と仕事以外の切り分けの難しさ」です。これらに「コミュニケーション不足」が加わることで「生産性の低下」という事態が生じると考えられます。
私たちの取り組みが目指すのは、これらの懸念を払拭し、単に企業の生産性の観点からだけでなく、従業員一人ひとりがイキイキと働くことができる職場づくりを実現することです。
新型コロナウイルスとの共存の時代に私たちに求められていること。それは単に働き方の選択肢を増やすことだけでなく、「一人にひとつの働き方」を通じて、仕事だけでなく、生活全般における私たち一人ひとりの生活の質を高めていくことなのではないでしょうか。
それが、新型コロナウイルスと共存し、そして打ち勝つために必要な、新しい時代の働き方である。そんなふうに考えています。
このサイトをフォローしませんか?