働く「時間」の選択制度について

今年6月スタートした、キャップクラウド株式会社の「働く場所の選択制度」。

制度発足後に実施した社内アンケートで、その満足度について、従業員の声とともにご紹介しました。(詳細は「こちら」)

こちらのアンケートでは、概ね高い満足の声が寄せられたこと、働く場所が柔軟に選べることが、従業員一人ひとりのQOLを向上させることなどが明らかになりました。

その一ヶ月後にスタートしたのが「働く時間の選択制度」です。

働く時間の選択制度の概要と意義

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上述の「場所」の選択制度に比べ、働く時間の選択制度の仕組み極めてはシンプルです。

基本的なルールは「5時〜22時までの好きな時間に働いていい」というもの。

従業員は上述の時間内で、雇用契約に定められた労働時間を働けばいい。これが働く時間の選択制度の骨子になります。

例えば一日の勤務時間が8時間の人の場合。従来の日本の雇用慣行に従えば、この方は午前のある決まった時間に出社し、一時間の休憩を挟んで9時間を、いわゆる「拘束時間」としてオフィスで過ごしたあとに退勤するということになります。

当社の働く時間の選択制度では、この時間的な制約を取り外しました。そして個々の従業員が自分のライフスタイルや働き方に応じて、始業時間と終業時間を柔軟に変化させることができるようにしました。

朝9時から3時間働いたあと、3時間のインターバル休憩。15時から2時間働いて1時間休憩。午後6時から9時まで就業して合計8時間の実働。そんな働き方ができるのが、当社の働く時間の選択制度です。

この制度には果たしてどんな意味があるのでしょうか。例として、子供の送り迎えのために午前8時〜9時と、午後4時〜5時は働くことができない、という人のケースを考えてみましょう。

従来の日本の雇用慣行に従い、就業規則で午前8時30分からの出社を一律に義務付けていれば、この方の働き方の選択肢は、子供の送り迎えが必要ない時間のみ就業するパートタイマーとなるか、当社ではない別の会社の従業員になるか、あるいはそもそも働くことを諦めるのか、ということになります。その方が仮に非常に高い業務関連スキルをお持ちであったとしても、です。

そのことに、別段不公平感も理不尽さも感じることなく、ただ「慣習だから」という理由で、その能力を十分に発揮できる機会を構造的に奪い続けてきたのが、これまでの雇用慣行だったということができるのではないでしょうか。

このことは、ご本人の不利益はもちろん、会社の損失になるのと同時に、優秀な人材の就労機会を奪ってしまう、社会全体の不利益にも繋がる可能性があります。

多様な働き方が実現するよりよい社会

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前述の通り、当社は先行して働く「場所」の選択肢を増やし、より柔軟に一人ひとりの状況に応じた働き方ができる仕組みを整えました。

そこに「時間」の柔軟性を付加したことによって得られる利益として、以下の3つが挙げられるとおもいます。

1.従業員の満足度を高め、QOLを向上させる

2.優秀な人材の流出を防ぎ、組織全体の生産性をUPさせる

3.働き方の選択肢を増やし、自分らしい働き方を選択できる社会を実現する

まず1.についてですが、後述の従業員へのアンケートから明らかなように、働く「時間」と「場所」が自由に選べることで、これまで、家事・育児といった家庭の事情によってはたき方に大幅な制約を受けていた人の雇用の機会の確保が可能となり、生産性高く働くことができるようになります。

そのことが、2.「優秀な人材の流出を防ぐ」という効果を産み出すことは明らかです。さらにこのことは、単に今就労している従業員の離職を防ぐことだけにとどまらず、広く優秀な人材を雇い入れることができるというメリットへと繋がります。それが「会社全体の生産性をUPさせる」ということは、論をまたないでしょう。

介護離職や育児離職などが社会問題となって久しいですが、家事都合などによって就労場所、就労時間が大きく制約される子育て世代等が不利な労働条件で就労することを余儀なくされる現状は、マクロな視点で見ると社会全体の損失を意味しています。

少子高齢化に加え、介護施設・保育所不足が叫ばれる昨今ですが、この問題の解決に向けた国の施策が十分であるとはいい難い現状を考えると、「3.働き方の選択肢を増やし、自分らしい働き方を選択できる社会を実現する」という当社の理念はもはや自社の利益のみにとどまらず、ある種の社会貢献であるとも言えるのではないでしょうか。

アンケート結果から

それでは、従業員へのアンケートを通じて見えてきた、この制度の具体的な姿についてご紹介してみたいとおもいます。

この制度から「メリットを感じている」と回答した従業員の割合は実に86.2%にのぼりました。

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その理由を詳細に分析してみると、従業員にとって、この制度のメリットは大きく分けて2つあるという実態がみえてきました。

一つは上述のとおり、家事都合による働き方の制約がなくなる、ということです。

子供の送り迎え等に加え、役所の手続きや病院への通院など、平日の日中に行う必要がある用事も、働き方選択制度によって、わざわざ有給を取得して行う必要がなくなります。

・これまで半休で行っていた行政手続きを時間変更で対応できたため、有休を有効に活用できそうと感じた。

・家のことをしながら働きやすくなりそう

・今まで時間の都合上、用事のために有給(主に半休)を取得していたを調整することができるようになった。(原文ママ)

など、この制度を使うことによって、わざわざ半日・一日といった時間を潰してまで行う必要のない用事を行えるようになったという意見が目立ちました。

もう一つは「午前中のほうが集中できて生産性が上がる」「朝のうちはゆっくり過ごして午後から集中して働きたい」など、業務効率が最も高くなる時間帯にピークをもってくるという働き方が可能になったという点。

家事都合といった外的な要因だけでなく、個人の体調やリズムに合わせた働き方が可能になることは、同じ「実働8時間」でも、そこに柔軟性をもたせることによって仕事のパフォーマンスが、少なくとも主観的には向上するということを意味しているようです。

イキイキと働けるようになったかどうかはわからない

一方で「この制度を使ってイキイキと働くことができるようになったか?」という質問に対して「まだわからない」という回答をした人が65%以上いたというのも、興味深い数字です。

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メリットを感じる人が8割以上いた一方で、「まだわからない」という回答をした人が6割以上いるという事実。これは「メリットを想像することは容易だが、実際には柔軟な時間の働き方ができない(していない)」人が多いということを意味しています。

これには、2つのタイプがあるようです。

1つ目のケースは、働く時間を選ばない/選ぶ必要がない人です。例えばこれまで長年培ってきた「生活のリズム」を変化させるのが難しく、働く時間を自由に決めていいとは言われても、実際にはこれまでと同じ就業時間で勤務している、というケースです。あるいは、そもそも働く時間を変える必要がない、つまり働く時間が選べないこれまでの仕組みでも、別段不自由さを感じていなかったので、新しい仕組みを利用していない人たちです。

「ルーチンを決めて毎日変わらず仕事をするほうが自分管理が楽なので」

「今の所、特に時間を変更して働く必要がないので。」

などの回答がこのケースにあたります。

もう一つのケースは「働く時間を選ぶことができる」というスタイルが業務内容にフィットしないケースです。具体的には受付業務や電話対応などの顧客対応などが中心の、法人向け営業やカスタマーサポートなどの業務についている人が該当します。

こちらのケースについて、少し詳しくみてみましょう。



働く時間の選択肢を複数持つことが難しい従業員への対応

社内で誰が今働いていて、誰が働いていないか?ということがわかりづらい状況は、労務管理といったマネジメント面での煩雑さを生じさせるだけでなく、現場レベルでも、「ちょっと聞きたいことがある時に聞けない」「電話がかかって来たのでつなごうと思ったのに、就業時間外だった」などの声につながっていきます。

誰がいつどこで働いているのかについては、就業中の従業員が分かるような仕組みを作ることで不利益を回避できそうですが、問題は上述のカスタマーサポートや法人営業などの業務に従事する従業員への、働き方選択制度に対する認識の共有の仕方です。

当然のことですが、誰もが好き勝手にこの制度を使って、好きな時間に出退勤すれば、会社という分業組織は立ち行かなくなります。社内業務がメインの人がいる一方で、対外的な業務に従事している人もいる。開発がいて、営業がいる。そしてそれぞれのパフォーマンスが最大化するように勤務時間や業務内容が決められている。それが会社という組織です。

つまり会社と従業員は、個々の従業員が雇用契約に基づいたその業務に従事することを前提条件として雇用契約を結んでいるんだ、という原点に立ち返ることで、「他の従業員は時間を自由に選択できているのに、自分はできない」という不公平感を是正することができるのです。

自分の業務を行うために働く場所や時間があって、業務が問題なくできる前提で、働く場所や時間の選択肢がある。そして自分の労働の対価として賃金等の報酬を受け取っているんだということをきちんと認識・共有できていれば、「不公平である」という意識は生じないはずです。

また、これは働く「場所」の選択制度を導入したときにも聞かれた声だったのですが、各従業員が就業場所や就業時間を自由に決めて働き始めると、コミュニケーションの機会は減っていきます。

働き方の自由度が増すということは、それまで「オフィス」という空間でともに過ごす時間を共有していた従業員同士のコミュニケーションの機会が失われていくことを意味しています。

このことは、「会社」というコミュニティに対する帰属意識の低下と表裏一体です。そして前回の「働く場所の選択制度」のアンケート結果を元にした記事でも明らかにしたように、コミュニケーション不足や会社への帰属意識が低下することは、組織の生産性の低下に繋がる可能性があります。

(働く場所の選択制度の記事はこちら

一人ひとりがイキイキと働ける組織を目指して

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都心部の満員電車通勤が社会問題になっていた頃からずっと「全員が同じ時間に出社して、同じ時間から働き始める」というスタイルに対する違和感というのは囁かれていましたが、これまでみてきたアンケートを見ると、「みんなで一斉に働き始めて、一斉に終業する」というこれまでのスタイルが、時代遅れを通り越してもはや「理不尽である」とすら感じられます。

製造業が全盛だった頃は、全員が一つの場所で同じ時間就業する形態が生産性の向上には不可欠だったでしょう。けれど産業構造が大きく変化した現代、もはや慣習的な労働形態や雇用形態を固持し続けることの蓋然性を見つけることは難しくなってきています。

社会が変われば、働き方も変化する。当然といえば当然の事なのかもしれません。

一方で、そんな社会の変化を映すように、働く時間が自由に選べることのデメリットもまた、浮かび上がってきました。個人の選択肢が増えることは、それだけ集団や組織の連帯感や結束が希薄になっていくことと表裏一体です。

働き方の自由度が上がれば、従業員の満足度も上がる。一方で、会社への帰属意識が低下していくことで、会社自体の生産性やパフォーマンスが下がっていく恐れがある。メリットを享受できる人とできない人との間に不公平感が醸成されることが、この帰属意識の低下に拍車をかけることになるのかも知れない。

今回のアンケートからは、そんなネガティブな一面を感じることになりました。

働く場所や時間の選択肢が増え、自分らしく働くことができるのというメリットを享受しつつ、会社全体の連帯感や帰属意識をいかに高めていくことができるのか。それは走り始めた「制度」を、血の通った、肌触りのいいものへと高めていくことの必要性を意味しています。

コロナ禍で消えつつある従業員同士の温かな人間関係をいかに再構築することができるのか?これが来たるべきWITHコロナ、AFTERコロナの時代を見据える私たちが取り組むべき次なる課題なのではないだろうか?そんなことを示唆するアンケート結果になっているのではないかと思われるのです。

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