LivingAnywhere Commonsでテレワークをしながら、色んな場所を旅してみる。〜津山編(1)〜
LivingAnywhere Commonsを利用するようになるまで、僕は(津山の住民の方には申し訳ないのですが)岡山県に「津山」という土地のあることを知りませんでした。
僕は大阪の人間なのですが、大阪と岡山の関係性は少しユニークで、これまでお話したことのある岡山県の方はほとんどみなさん、大阪をご自身たちの生活圏内の一部であるというふうに感じておられます。買い物をしたり、出かけたりする時は大阪に来られるんだそうです。岡山の方にとって、大阪は「日帰り圏内」なんです。
ところが、大阪に住んでいる人からすると、岡山はどちらかというと中国地方に属していて、関西からの「旅行先」「泊りがけで行くところ」というイメージが強いんです。
ですから、岡山から新大阪まで新幹線で1時間かからないから、という説明を聞いて初めて「あ、そんなに近かったのか」と再認識することになります。そして大阪から高速バスで3時間程度で訪れることができるここ津山もまた、そんな岡山県と大阪府の、地理的ではなく心理的な位置関係を表しているような感じがしています。
大阪から3時間でいける街、津山
そんな津山市は、東西に吉井川が流れる周囲を美しい里山に囲まれた、とても穏やかでこじんまりとした、上品な街です。
岡山県は明治以前の地方行政区分では「備前(びぜん)」「備中(びっちゅう)」と「美作(みまさか)」に分けられます(備後の一部も、現在の岡山県)が、その「美作」と呼ばれた地域に、城下町津山はあります。
津山駅を出てから歩いて10分ほどで、津山城跡にたどり着くことができます。「日本三大平山城」(平山城=平地にある丘陵を利用して建てられた城)ということですが、それも明治初期の廃城令によって取り壊しとなったようで、今では石垣が残るのみとなっています。
そんな津山城下のいわゆる「大手町」は、これは僕が今まで旅先で訪れたどんな大手町よりもこじんまりとしていました。
高台にあるお城の石垣がないと、そこが大手町であるということをうっかりと見落としてしまいそうになるくらいでしたが、近くに行政の庁舎があることからかろうじてそこがこの地方のかつての中心であったということが分かります。
その街の外れに、中国地方に本拠を置く百貨店を囲むようにして広がる商店街があって、日本の多くの地方都市の商店街がそうであるように、少し元気を失いつつあるかのようにも見えるその一角。もともと信用金庫だったという3階建の建物を改装してできたゲストハウス(1F)兼カフェ(2F)、兼コワーキングスペース(3F)があって、一種独特の異彩と、活気を放っています。
LivingAnywhere Commons津山でもある「INN-SECT」です。
LAC津山
これまで様々なLAC拠点を周ってきて、ここが5つ目の拠点になりますが、ここまで、一つの空間で、全てが完結してしまう拠点はここが初めてです。
1階のカフェはアジアンフードを提供するカフェで、BGMにはジャズが流れ、元信用金庫とは思えないような、木の温もりが心地よい空間になっています。並べられた本はどれも自由に閲覧可能です。
その上の2階がゲストハウスになっていて、こちらは1階のカフェ同様、一般の方も利用可能です。そして3階にはこじんまりとしてはいますがコワーキングスペースがあり、少しビジネステイストが強いものの、下のカフェとの統一感を感じさせる空間で、とてもリラックスした雰囲気で仕事に打ち込むことができました。
朝起きて、身支度を済ませたらそのまま3階のコワーキングスペースに上がり、お昼ごはんは1階のカフェで美味しいエスニック料理をいただいたあと(僕はベトナム料理の「フォー」がお気に入りでした)、少し休んでまた3階に上がる、というルーティン。
外に全く出ていく必要がないくらい、機能的でかつ心地いい空間がここINN-SECTには凝縮されて用意されていました。
街歩き
小高い丘の上にある津山城跡からはコンパクトな街が一望でき、お休みの日の午前中だったにもかかわらず、比較的多くの観光客で賑わっていました。
上述の通り、お城自体はずいぶん昔に取り壊されてしまっていますが、このお城の奥の位置にあたる備中櫓は、その建築の重要性から築城400年を記念に復元されたといい、内部は無料で公開されています(城郭への入場料は必要)。
南の方角、駅の方に向かって歩くと、程なく吉井川の堤防に出ます。ぼくの滞在中はほとんど毎日いいお天気で、仕事が少し早く終わったあと、堤防沿いをのんびりと散歩するのは本当に心地よかったです。
そうこうしているうちに夕方になります。この地方は「焼き肉」が有名らしく、名物は「ホルモンうどん」という、牛肉のホルモンを混ぜた焼きうどんと「干し肉」だそうです。
なんとなく立ち寄った駅前の、親父さんが一人でお店を切り盛りしている定食屋さんで頂いたホルモンうどんも美味しかったですし、地元の方に伺って訪れたLAC津山から歩いてすぐのところにある焼肉店も、とても美味しかったです。
レプタイル社の人々
ある日、僕がいつものようにカフェでランチをしていると、ちょっと珍しい女性からMessengerでメッセージを頂きました。ちょっとした知り合いでもあるその女性ですが、2度ほどお見かけしたことがあるだけで、そんなに親しいというわけでもありません。
「いま、津山にいらっしゃるんですか?」という一行だけのシンプルなメッセージ。どうして知ってるんだろう?誰かから聞いたのか?確かに共通の知人は多いしな。「はい、そうです」とだけ返信して、僕のこのカフェでの一番のお気に入りのメニュー「大山鶏のフォー」に戻ります。
するとすぐに「いま、私も同じところにいます」という返信が。おもわず「えっ!?」と声が出てむせてしまいました。顔を上げると、斜向かいの席で、お母様と食事をしていらっしゃるその女性が笑ってこちらをみています。LACにいると何らかの偶然に毎回出会いますが、今回のそれはさすがにびっくりしました。
その方が、このINN-SECTを運営する母体である「Reptile株式会社」にこれから訪問するといいます。こんな素敵な空間をプロデュースする人たちに、ぜひ僕もあってみたい。無理を言って一緒に訪問したい旨をお伝えしたところ、快く引き受けてくださいました。
そして想像していたとおり、あるいはそれ以上に、INN-SECTから歩いて数分のところにある「Reptile株式会社」で働く方々は個性的で、魅力的でした。
津山の街を元気にするために、この地で起業する起業家たちを応援することを生業としているというこの会社。
みなさん本当に津山が好きで、心から津山を元気にしたいと思っていて、そのために自分たちには何ができるか?いつも考えておられるようでした。そこに悲壮感やネガティブな義務感はまったくなく、特に誰かに頼まれてやっているわけではなさそうな仕事を本当に心から楽しんでおられます。
「この子を食べさせていけるだけの稼ぎがあれば、とりあえずうちの会社は十分なんです」そういって見せて頂いたアフリカゾウガメのももちゃん(とレプ太くん)、本当に可愛かったです。
大阪へ
それ以外にも意外な偶然や出会いが重なり、LACを利用希望だというモロッコ人のインフルエンサーの男性を紹介していただいたりだとか、面白いことずくめだったLAC津山。一週間の滞在としてしまったことが悔やまれましたが、この週の週末はどうしても大阪へ戻らなければならなかったので、やむなくここをあとにします。
津山駅前を10時ちょうどに出発したバスは、雨の中国自動車道を一路大阪に向かって走ります。
たしかに。ほんの3時間で大阪のターミナル駅梅田のとてもにぎやかな繁華街に到着しました。「大阪は日帰り圏内」は、このレプタイル社の女性副社長がおっしゃったことです。
大阪からたったの3時間の快適なバスの旅でたどり着ける、こじんまりとした佇まいの城下町、津山。そこに根ざす個性的なINN-SECTとReptile株式会社の人々。
「起業したくなったら、うちのセミナーに来てくださいね!」といって見送ってくださったみなさんに、またもう一度会いに来たい、そんなふうに思いました。起業する・起業しないはともかくとして。
岡山県との心理的な位置関係がぐっと近くなった一言でした。
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